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昨年、某出版社主催の講演会にゲストスピーカーとして出席した。会の正確なタイトルは忘れてしまったが、テーマは「海外で住む・働く」。カナダは移民国家だが、巷では情報が不足しているようで、移民コンサルタントを交えた講演会は、会費を払うにも関わらず、100人以上が参加、質問も飛び交い、確かに白熱していた。私の役割は、「在住10年の体験談」を語ること。
▼オンタリオ州トロント
私がカナダに移住したのは1989年。日本はまだバブル絶頂期だった。景気のよい日本を尻目に、リセッション(景気後退)で喘(あえ)いでいるという表現がぴったりのカナダに何故行くの?と、誰もが私を引きとめた。この決断が正しかったのかどうかは今をもってわからないが、でもやはり良かったと思う。何故なら、私はカナダにいると安心感があり、幸せだなと感じているから。
たった10年の経験だが、海外に興味があり、少しでも情報を得たいという方たちの手助けになれればと思い、「コラム:カナダって、こんな国」の第二回は「カナダに住みたい」をテーマにお話ししたい。カナダに最初にやって来たのは、イギリス人とフランス人。そのようなところから、公用語は英語とフランス語になった。カナダ製品のすべての表示に、フランス語と英語の両方が記載されているのをご存知だろうか。東のケベック州を中心にフランス系が多く住み、ケベックやモントリオール周辺で仕事を探そうと思うなら、フランス語は不可欠だ。が、トロントも含めて西の方では、英語のみでも十分生活していける。トロントには、ケベックから多くのフランス系カナダ人が英語留学し、バイリンガルを目指している。英語とフランス語ができると給料がいいし、政府関連の仕事では必要条件だ。
アメリカが「人種のるつぼ」なら、カナダは「モザイク」だといわれているが、これは本当にそうだと思う。他の人種であっても、アメリカに移住したら、星条旗の元でアメリカ人として生きていくのに比べて、カナダはそれぞれの民族が独自のスタイルを維持しながら生きている。よその国に来たのに、よそ者のままで生活するなんて、わがままな話だが、それがカナダの長所でもあり、短所でもあるのかもしれない。
ブリティッシュコロンビア州(以下BC州)のリッチモンド市では、人口の60%以上を中国系が占め、この辺りの公用語は、広東語と英語だというウワサ。バンクーバーが「ホンクーバー」などと言われる所以である。確かに、英語が通じない店も多く、中国人がカナダに住んでいるというよりも、カナダの中に香港や台湾、中国がある・・といった感をぬぐえなくもない。映画のような治外法権のチャイナタウンが存在しているかどうかは定かでないが、カナダの法律ははっきりしていて、性・出身国・肌の色・宗教・年齢・障害などによる人種差別を禁止している。実際、日本でもいろいろな国の人たちが住んでいて、言動を慎まなければいけないことも多いのだが、さまざまなことは、やはり日本人中心。だが、カナダでは異なるバックグランドをもつ人たちが、肩を寄せ合って生活しているので、その心構えは必要だと思う。
さて、前置きが長くなったが、カナダに住むということを実現するにはどうしたらよいのか。まず、ビザが必要だ。大学や語学学校入学のことについては、数多くの留学関連の雑誌やサイトがあるので、そちらを参照にしていただきたい。
留学以外で、手っ取り早くカナダに住んでみたい人にワーキングホリデーという方法がある。ご存知の方も多いと思うが、ワーキングホリデーは休暇を過ごすことを目的に、最長1年間、海外生活を体験できる特別なビザ制度だ。現地では滞在費を補うためのアルバイトも認められている。条件の中に、同じ雇用主の元で3カ月以上働けない、とあるが、実際にはこの決まりは守られていない。遊べて、しかも働ける・・というと、いかにも美味しい話のようだが、目的意識がないと1年間は、瞬く間に過ぎてしまうし、結局は何も身にならず、帰国したら仕事も見つからなかったという例も少なくないため、自分が何をしたいのかをじっくり考えてほしい。
語学留学なら、日本で資金を調達し、大学に入れる英語力をつけてから出発することをお薦めしたい。基礎のしっかりしている人はともかく、そうでない場合、バイトをしながら英語力をつけるというのは、かなり難しい。何故なら、最長でも1年間のワーキングホリデーたちが働く場所は、日本人観光客の行くお土産物店やレストラン、旅行会社が多いため、気づいてみたら、日本人と会社の寮やアパートで共同生活し、お客さんも日本人、アフターファイブも日本人と・・という生活。しかも、少ない資金源のため仕事は止められず、雇用主からは残業を課せられ、手当てももらえないという話もよく聞く。もし、カナダ人なら当然、権利として訴えるだろうが、短期滞在者であるために、それもせずに帰国し、また新しい人がやって来て・・、と同じパターンになっている。 ▼BC州バンクーバー・スタンレーパーク
それでもワーキングホリデーを機会に、何かを身につけたり、労働ビザ、永住権を取ったり、カナダ人と結婚、大学入学などと違う形で、発展していく人も中にはいるため、海外に出るきっかけとしては決して否定できない。私もそうだったが、若いうちは恐いもの知らずで無謀だが、自分さえ流されなければ、順応性もあるのだから。とにかくビザ選びは慎重に。
ワーキングホリデーには18〜30歳まで、という年齢制限がある。では、それ以上の人には、もうカナダに住むチャンスがないのかというと、そのようなことはない。永住権という方法がある。これは日本国籍を失わずに、カナダに永久に住むことができるビザだ。カナダ人と同じ権利をもっているが、選挙権がないのと、1年間のうち183日はカナダに居住していなければいけないという決まりがある。ここでは、家族や親戚もなく、投資する資金もないが、移住したい人のカテゴリーとして、「個人移民」をご紹介しよう。実は私もかつてこの方法で申請した。
個人移民の申請はポイントで評価され、年齢・職種・教育と訓練・職歴・学歴・語学力・雇用保証などの項目の合計点数が、基準に達すれば申請を受けられる。18歳以上なら、資産やスポンサーの有無を問われず申請可。44歳までのポイントが高いため、それ以上になると、だんだん不利になる。高いポイントを受けることができる職種は、カナダがもっと増やしたいと望んでいる仕事で、毎年変わる。カナダ国外から申請すること。
個人移民で大きく問われるのは職種だが、ビザを得たからといって、本当にその仕事に就けるかどうかは保証されていない。あとは、本人の努力と運。
私がカナダにいて感じる安心感は、銃の所持を禁止している治安のよさ(それでもたまには発砲事件が起きているが)と、整った社会保障制度のせいかもしれない。皆が安いお金で医療を受けられたり、自他国を問わず、人に手を差し伸べようという姿勢は、カナダ住人として本当に誇れるものだ。その分、税金が高いのも仕方ないかもしれない。ちなみにBC州では計14%の消費税だ。平等を考えるあまり、経済力がアメリカに負けていたり、教育をカナダで受けた優秀な医者がやはり隣の国に流出してしまったり、いろいろあるが、それぞれの人権の尊重と自由を掲げるこの国は、きっとこれからも変わらないだろうし、私もそうであって欲しいと望んでいる。カナダって、こんな国。まだまだ続きます。

▲BC州ビクトリア
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